【名場面0049】「…………姐さん、おいらに勝ち誇ってどうするんですか?」 [疾走れ、撃て!]
「…………」
物陰から、虎紅はそんなミヅキの背を見ていた。
使い魔・ジンジュウロウからの報告を聞いて、自分の料理の失敗にガッカリし、気晴らしにPXにでも、と思って外に出た途端にミヅキが走っていくのを見たのである。
少女はしばらく腕組みをして考える。
あの少女の態度と、ブツブツ呟いていた言葉の意味を。
「…………」
「あー、姐さん?」
【名場面0032】「…………判ってる!」 [疾走れ、撃て!]
【名場面0025】「子犬…………好きなんだ」 [疾走れ、撃て!]
魔導士官の少女…………紫神虎紅は、ふと目を開けた。
ずるずると頭からかぶっていた毛布を取る。
能面のような無表情は変わらず…………いや、僅かに薄い唇の線が緩んでいる。
「子犬…………好きなんだ」
あろうことか、僅かに…………本当に僅かに…………声が弾んでいた。
「良かった…………優しい人で」
ゆっくりと満足の頷きを何度もしながら、少女はこてん、とソファの上に横になった。
広すぎる支給品のベッドより、この適度に小さくて適度に硬い、このお気に入りのソファの上で何度も寝返りを打つ。
「良かった…………本当に良かった……」
何度も呟きながら、少女はなかなか寝付けなかった。
ずるずると頭からかぶっていた毛布を取る。
能面のような無表情は変わらず…………いや、僅かに薄い唇の線が緩んでいる。
「子犬…………好きなんだ」
あろうことか、僅かに…………本当に僅かに…………声が弾んでいた。
「良かった…………優しい人で」
ゆっくりと満足の頷きを何度もしながら、少女はこてん、とソファの上に横になった。
広すぎる支給品のベッドより、この適度に小さくて適度に硬い、このお気に入りのソファの上で何度も寝返りを打つ。
「良かった…………本当に良かった……」
何度も呟きながら、少女はなかなか寝付けなかった。
【名場面0021】「…………暖かかった」 [疾走れ、撃て!]
「…………」
それが完全に閉まりきったのを確認して、少女は大きな溜息をつき、自分の右手を左手で包み、大事そうに胸元にかき抱いた。
頬がみるみる桜色に染まり、目が細くなる。
親友の内藤時雨でさえ見たことのない、驚くほど華やかな、嬉しそうな顔。
「…………暖かかった」
ぽつり、と呟いた。
その手には、少年の指先が触れたのだ。
それが完全に閉まりきったのを確認して、少女は大きな溜息をつき、自分の右手を左手で包み、大事そうに胸元にかき抱いた。
頬がみるみる桜色に染まり、目が細くなる。
親友の内藤時雨でさえ見たことのない、驚くほど華やかな、嬉しそうな顔。
「…………暖かかった」
ぽつり、と呟いた。
その手には、少年の指先が触れたのだ。
【名場面0018】「あの時は…………緊張、してたから」 [疾走れ、撃て!]
「でねー。この子ったら、こういう無表情でしょー? もー大変だったわよ最初は」
「…………時雨、そういう言い方はないと思う」
さすがに虎紅が言うと、
「だーって、あなた、訓練生時代はムチャクチャ優秀、って太鼓判押されて、どんな子かなーって思ってたら、赴任してきて一週間、誰とも喋らなかったじゃないの。ようやく『さようなら』って言ったとき、士官休憩所がひっくり返るような騒ぎになったんだからー」
「あの時は…………緊張、してたから」
あろう事か、虎紅はうつむいて恥ずかしそうに身を縮めたのである。
(あ、可愛いかも…………)
大きな帽子をぐいっと引き下げて、その中に首まですっぽり入ろうとするような動作が妙に幼い外見とマッチしすぎていて、理宇は思わず微笑んだ。
「…………ロリコン」
どしゅっと音を立てて突き刺さるような鋭いひと言をミヅキが囁く。
「誰がだよ」
「うるせえ、バカ」
「…………時雨、そういう言い方はないと思う」
さすがに虎紅が言うと、
「だーって、あなた、訓練生時代はムチャクチャ優秀、って太鼓判押されて、どんな子かなーって思ってたら、赴任してきて一週間、誰とも喋らなかったじゃないの。ようやく『さようなら』って言ったとき、士官休憩所がひっくり返るような騒ぎになったんだからー」
「あの時は…………緊張、してたから」
あろう事か、虎紅はうつむいて恥ずかしそうに身を縮めたのである。
(あ、可愛いかも…………)
大きな帽子をぐいっと引き下げて、その中に首まですっぽり入ろうとするような動作が妙に幼い外見とマッチしすぎていて、理宇は思わず微笑んだ。
「…………ロリコン」
どしゅっと音を立てて突き刺さるような鋭いひと言をミヅキが囁く。
「誰がだよ」
「うるせえ、バカ」