【名場面0049】「…………姐さん、おいらに勝ち誇ってどうするんですか?」 [疾走れ、撃て!]
「…………」
物陰から、虎紅はそんなミヅキの背を見ていた。
使い魔・ジンジュウロウからの報告を聞いて、自分の料理の失敗にガッカリし、気晴らしにPXにでも、と思って外に出た途端にミヅキが走っていくのを見たのである。
少女はしばらく腕組みをして考える。
あの少女の態度と、ブツブツ呟いていた言葉の意味を。
「…………」
「あー、姐さん?」
その足下の影から、ひょっこりと子犬型の使い魔が顔を出した。
「つまり旦那の事に関して、姐さんが一歩リードした、ってことじゃあありませんかい?」
「…………」
しばらく、自分の足下を見下ろしていた虎紅だったが、「ああ」と納得したらしく、腰に左手をあてて、ぐいっと右手を突き出し、Vサインをしてみせた。
むろん当然、無表情。
「…………姐さん、おいらに勝ち誇ってどうするんですか?」
「…………」
少女は首を傾げる。
どうやらはしゃいだり、喜んだりすることに関しても不器用らしかった。
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紫神虎紅(さきがみこべに)×ジンジュウロウ
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「疾走(はし)れ、撃て!」
(神野オキナ著、メディアファクトリーMF文庫J刊)
「第九章 ミヅキは苛立ち、理宇はドタバタする数週間」(P.218~219)より
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可愛すぎる少佐殿・紫神虎紅のお茶目っぷりをご堪能ください。
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