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【名場面0025】「子犬…………好きなんだ」 [疾走れ、撃て!]

 魔導士官の少女…………紫神虎紅は、ふと目を開けた。
 ずるずると頭からかぶっていた毛布を取る。
 能面のような無表情は変わらず…………いや、僅かに薄い唇の線が緩んでいる。
「子犬…………好きなんだ」
 あろうことか、僅かに…………本当に僅かに…………声が弾んでいた。
「良かった…………優しい人で」
 ゆっくりと満足の頷きを何度もしながら、少女はこてん、とソファの上に横になった。
 広すぎる支給品のベッドより、この適度に小さくて適度に硬い、このお気に入りのソファの上で何度も寝返りを打つ。
「良かった…………本当に良かった……」
 何度も呟きながら、少女はなかなか寝付けなかった。

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紫神虎紅(さきがみこべに)
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「疾走(はし)れ、撃て!」
「第三章 新兵は吐くのが、教官は怒鳴るのが常」(P.93)
(神野オキナ著、メディアファクトリーMF文庫J刊)
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 台詞のみならず地の文でも三点リードばかりの無敵の無表情少女です。

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