【迷場面0127】「今度は話が深すぎる!」 [オルキヌス 稲朽深弦の調停生活]
「じゃあ何か、適当に話でもしようか」
「お話? 何を話すの?」
「何でもいいよ。メルは何か話したいこととかある?」
んー、と幼いハーピーはしばらく考えて、
「森羅万象における人間の存在意義について」
「即興で話すにはちょっと難しいな!」
【迷場面0126】「最悪な慰め方だ!」 [オルキヌス 稲朽深弦の調停生活]
【迷場面0125】蜘蛛、言い訳。 [オルキヌス 稲朽深弦の調停生活]
「あ、あの……初めまして」
二メートルを越える蜘蛛に話しかける人間。
端から見れば奇異以外の何でもない光景だが、それはあくまで外界の話。
ここではその常識は通用しない。なぜなら――
「はい、初めまして」
当たり前のように頷き、挨拶を返す蜘蛛。その言語はこの島における知的生命体が用いる共通言語。ならばこの蜘蛛もまた――知性ある存在に他ならない。
「うわぁ……!」
自然に挨拶する蜘蛛を見て、深弦の興奮は頂点に達した。
オルカ。幻想の島にしか居ない幻想の生物の総称。人語を解し、知性を持ち、力を持ち、長久の歳月を生きる人ならざる異形の幻獣。
それが今、こうして目の前に居る。もしも深弦に理性がなければ即座に蜘蛛に歩み寄り、その全身をくまなく撫で回そうとしただろう。
そんな興奮を隠そうともしない深弦に、蜘蛛はゆっくりと前足を上げた。