【書感0006】とある飛空士への恋歌 [とある飛空士への追憶 / 恋歌]
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「とある飛空士への恋歌」
(犬村小六著、小学館ガガガ文庫刊)
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その刊行予定を知って以来待ちに待ったけどある意味読むのが怖かった、恋と空戦の物語の新作です。
とはいえ、「追憶」とは舞台となる世界が共通なだけで、ストーリー的にはシャルルもファナも関係ないんですね。なので、続編という言葉も適当ではないようです。しかも、単なる新作ではなく新「シリーズ」でした。
それはともかく……今度ももののみごとにやられちゃいましたよ。ラストの6ページで。266ページを読んだときには内心で高らかに叫んでしまいました。
【名場面0022】「空のなかでは身分なんて関係がないから」 [とある飛空士への追憶 / 恋歌]
「シャルルにとって、空が宝物なのね」
こめかみから出血が続き、操縦桿を握る腕にも満足な力が込められない状態だが、シャルルの意識はかえって覚醒していた。
「その言い方、格好いいね」
おどけた口ぶりでシャルルは茶化した。
「真面目に言ったのに」
むくれたファナの言葉が返る。
「地上のことがくだらなく思える瞬間はあるかも。空のなかでは身分なんて関係がないから」
こめかみから出血が続き、操縦桿を握る腕にも満足な力が込められない状態だが、シャルルの意識はかえって覚醒していた。
「その言い方、格好いいね」
おどけた口ぶりでシャルルは茶化した。
「真面目に言ったのに」
むくれたファナの言葉が返る。
「地上のことがくだらなく思える瞬間はあるかも。空のなかでは身分なんて関係がないから」
【雑感0002】読むべきか?読まざるべきか? [とある飛空士への追憶 / 恋歌]
ついに来た、この日が!
2008年のマイ・ベスト・オブ・ラノベ「とある飛空士への追憶」の続編「とある飛空士への恋歌」、本日発売!! 前作からちょうど一年後というこのタイミングでの刊行は、狙っていたんでしょうか。
でもいいのかなぁ……。あのエンディングに続きを作っちゃっていいのかなぁ……。というか、一つの作品として隙なく無駄なく完成していたあの作品をシリーズにしてしまっても大丈夫なのかな? 「恋歌」というタイトルには否応なしに期待させられますが、はたして…………?
とはいえ、あらかじめ他人の感想を聞いてから読むだなんて絶対ヤだから、きっと発売当日にゲットして、発売当日に読……め……ないんだよなぁ、今週は(T_T; 週末も予定詰まってるし、体調もよくないし、タイミング的にはほんと最悪です(T_T;
とにかく、期待しすぎて失敗しないよう、無心で待とうと思います(^^;
2008年のマイ・ベスト・オブ・ラノベ「とある飛空士への追憶」の続編「とある飛空士への恋歌」、本日発売!! 前作からちょうど一年後というこのタイミングでの刊行は、狙っていたんでしょうか。
でもいいのかなぁ……。あのエンディングに続きを作っちゃっていいのかなぁ……。というか、一つの作品として隙なく無駄なく完成していたあの作品をシリーズにしてしまっても大丈夫なのかな? 「恋歌」というタイトルには否応なしに期待させられますが、はたして…………?
とはいえ、あらかじめ他人の感想を聞いてから読むだなんて絶対ヤだから、きっと発売当日にゲットして、発売当日に読……め……ないんだよなぁ、今週は(T_T; 週末も予定詰まってるし、体調もよくないし、タイミング的にはほんと最悪です(T_T;
とにかく、期待しすぎて失敗しないよう、無心で待とうと思います(^^;
【名場面0015】「飛、空、士、さん」 [とある飛空士への追憶 / 恋歌]
かすかな寝息が、夜の海上の静寂へ溶けていく。
ファナは腰を下ろすと、毛布のなかで自分の膝を抱きかかえて、顎を膝小僧に乗っけた。
「飛、空、士、さん」
悪戯っぽい声音で呼んでみた。
反応は全くない。
どこか張りつめた普段の雰囲気が消え、いまのシャルルは遊び疲れた子犬みたいに眠っている。
「シャ、ル、ル」
名前で呼んでみた。返事はない。ファナは微笑んで首を傾げ、頬を膝小僧にくっつけてシャルルの寝顔を眺めた。
ファナは腰を下ろすと、毛布のなかで自分の膝を抱きかかえて、顎を膝小僧に乗っけた。
「飛、空、士、さん」
悪戯っぽい声音で呼んでみた。
反応は全くない。
どこか張りつめた普段の雰囲気が消え、いまのシャルルは遊び疲れた子犬みたいに眠っている。
「シャ、ル、ル」
名前で呼んでみた。返事はない。ファナは微笑んで首を傾げ、頬を膝小僧にくっつけてシャルルの寝顔を眺めた。
【名場面0014】光を見つければ、またシャルルの声が聞ける。 [とある飛空士への追憶 / 恋歌]
表情を引き締め直し、ファナは伝声管を側壁へ戻した。
再びじいっと空を見つめる。気がつけば今日は一度も、玻璃の奥へ引きこもっていない。ずっと神経を集中して目の前の現実を眺め渡している。
不思議な気分がした。
出発前は正直、我が身がどうなろうが大した興味も抱けなかった。なのにいまは、奇妙なほどに現実を生き生きと直視している自分がいる。生と死が隣り合っている緊張感のせいだろうか。いや、それもあるがそれだけではない。
伝声管越しに、シャルルと言葉を交わすのがなんだか楽しいのだ。
金属管を通じて聞く彼の声は、緊張していたり、不自然なくらい丁寧だったり、ほっとしていたり、いきなり怒ったりする。生のままの感情を隠すことなく、直接ファナに放り投げてくる。その感覚が新鮮だった。
――もっと声が聞きたい。
再びじいっと空を見つめる。気がつけば今日は一度も、玻璃の奥へ引きこもっていない。ずっと神経を集中して目の前の現実を眺め渡している。
不思議な気分がした。
出発前は正直、我が身がどうなろうが大した興味も抱けなかった。なのにいまは、奇妙なほどに現実を生き生きと直視している自分がいる。生と死が隣り合っている緊張感のせいだろうか。いや、それもあるがそれだけではない。
伝声管越しに、シャルルと言葉を交わすのがなんだか楽しいのだ。
金属管を通じて聞く彼の声は、緊張していたり、不自然なくらい丁寧だったり、ほっとしていたり、いきなり怒ったりする。生のままの感情を隠すことなく、直接ファナに放り投げてくる。その感覚が新鮮だった。
――もっと声が聞きたい。