【名場面0054】「今ハモット可愛イデスヨ」 [小さな魔女と空飛ぶ狐]
「あれは私が十四歳の、超可愛かった時のこと……」
唐突に話し始めた、と思うとすぐに黙りこくり、クラウゼをジトッと見つめる。
クラウゼはアンナリーサがなぜ黙ったのかわからず、話の再開を待っていたが、やがて、アンナリーサが痺れを切らしたように罵声を張り上げた。
「なんで今はもっと可愛いですよって言わないのよ、シュナウファーッ!」
数秒の瞑目に入ったクラウゼは、最近呼び捨てにされることが多いなあ、五つも年上なんだけどなあ、と内心でぼやき、眉間を押さえながらおもむろに口を開いた。
「凡人の私に、そのような洗練された返しを求められても困ります」
アンナリーサは機微を読まないクラウゼに向かって盛大に舌打ちし、仕切り直すようにこほんと小さく咳をした。
「あれは、アナトリアで開かれた国際数学シンポジウムでわたしが講演した時のこと……」
「今ハモット可愛イデスヨ」
とクラウゼが機械音声のほうがまだ人間らしい棒読みで合の手を入れる。アンナリーサは銃声のような舌打ちをして睨みつけ、ふん、と鼻息をつき、口元をへの字に曲げた。不機嫌全開なのに何となく愛らしく見えるのは、美少女の特権だろう。
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アンナリーサ・フォン・ラムシュタイン×クラウゼ・シュナウファー
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「小さな魔女と空飛ぶ狐」
(南井大介著、アスキー・メディアワークス電撃文庫刊)
「第二章」(P.129)より
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アンナリーサかわいいよアンナリーサ(^^;
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