【迷場面0153】「わ、わたし、処女じゃないもん! 経験済みだもん! もう大人だもん!」 [小さな魔女と空飛ぶ狐]
「ふうん。ねえ、中尉さん、ちょっと質問して良いかしら?」
アンナリーサが唇の端をにこやかに曲げながらクラウゼに尋ねる。
「ええ。どうぞ」
クラウゼは敬礼を解きながら、アンナリーサの瞳にある感情に気づく。
「人を殺した時ってどんな感じ?」
場の雰囲気が一変し、液体窒素をぶちまけた様に空気まで凍りついた。
クラウゼはアンナリーサの瞳にある感情を理解した。
好奇心だ。猫がネズミをなぶるような悪意なき残酷さに溢れている。眉や瞼、瞳、皺の動きまで見逃すまいとする目は、まるで新薬を投与したネズミの反応を観察しているようだ。
「貴方はサピアで大勢を殺したんでしょう? 空戦で、爆撃で、たくさん殺したんでしょう? ねえ、どんな気分? どんな気持ち? 昂奮した? 後悔した? 楽しかった? 辛かった? コンバット・ハイを経験したことは? PTSDは発症した?」