【名場面0053】現代の魔法使い達は神や悪魔なんて暇そうな輩の力は借りない。 [小さな魔女と空飛ぶ狐]
「いったい、どんな魔法を使ったんですか?」
クラウゼの問いかけに、
「あらゆる問題には答えが存在する。だけど、世界には解法の糸口さえ見えない難問がたくさんある。歴史上の多くの天才達が挑み、それでも解けないのはなぜだと思う?」
得意げに語るアンナリーサの横顔は十六歳の少女ではなく、新進気鋭の科学者であり、年若いながら立派な魔女のものだった。
アンナリーサはクラウゼの返答を待たず、
「それは解くための術が見えていないから。近過ぎれば周囲が見えない。遠過ぎれば細部が見えない。でも最適な距離に立てば、放っておいても答えは見える。闇の中にふっと光が差すように、厭でも目に入る。その光さえ見えてしまえば、あとは……」
天使のような顔に悪魔のような微笑を浮かべ、告げた。
「一瞬よ」
現代の魔法使い達は神や悪魔なんて暇そうな輩の力は借りない。科学という名の魔法を使って世界の理を恣(ほしいまま)に操る。数字と記号で世界の理と自然の秘密を暴く魔法使い達。アンナリーサ・フォン・ラムシュタインが、その魔法使い達の中でも間違いなく最上辺にいる魔女であることを証明した瞬間だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
クラウゼ・シュナウファー×アンナリーサ・フォン・ラムシュタイン
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「小さな魔女と空飛ぶ狐」
(南井大介著、アスキー・メディアワークス電撃文庫刊)
「第二章」(P.97)より
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
南井大介期待の新作より、セリフそのものよりも最後の地の文のほうが実はお気に入りな、こんなシーンをどうぞ。
その「最適な距離」をいかにして早く見つけるかが問題ですよねぇ。
それにしても…………アンナリーサかわいいよアンナリーサ(^^;
コメント 0