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【迷場面0070】「これで東京も世界標準に追いつくわよ」 [カンピオーネ!]

 護堂の拒絶に、エリカは『へえ、そんなこと言っちゃうんだ~』という感じで微笑んでから、わざとらしく目を伏せた。
「そう――なら仕方ないわね。このままゴルゴネイオンがこの国にあったら、いずれ『まつろわぬ神』が降臨するでしょう……。でも、わたしたちに頼るべき王はいない。誰かさんとの決闘で大怪我して、姿を消してしまったから……」
 ほのかに悲壮感をにじませながら、淡々とエリカがつぶやく。
 痛いところを突かれた護堂は、思わず縮こまった。
「ねえアリアンナ、もし神が現れたときは名誉にかけて、あなたのことを守るわ。――でも、ごめんなさい。わたしの力ではきっと神には敵わない。せめて、あなただけでも生きのびられるように死力を尽くして戦うから!」
「そ、そんな!? エリカさま、そんなことをおっしゃらないで下さい! わたしもエリカさまと共に戦います。大したことはできませんけど、足手まといにはなりません!」
「なんて健気な娘なの……。あなたの勇気に、神の御加護がありますように! ああ、でも、頼る者のないか弱き市井の人々は、一体どうなることでしょう……!」
 わざとらしく小芝居を打つ女主人に、アリアンナが真剣に応じている。
 エリカの目が明らかに笑っているのを、護堂は見逃さなかった。この女はどうすれば草薙護堂の心に負担を与えられるか、熟知しているのだ。
 なんて悪辣なヤツ!
 良心と義侠心と地元への義理の間でしばらく思い悩んだあと、護堂はようやく返答をしぼり出した。
「…………わかったよ。俺が持っていけばいいんだろうッ。くそ、これで何か起きたら、東京都民にどうやって言い訳すればいいんだ!?」
「気にしない気にしない。王の気まぐれで街ひとつ滅ぶことなんて、ヨーロッパじゃ日常茶飯事なんだから。これで東京も世界標準に追いつくわよ」
「いいかげんなウソつくな!」

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草薙護堂×エリカ・ブランデッリ×アリアンナ・ハヤマ・アリアルディ
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「カンピオーネ! 神はまつろわず」
「第2章 決闘と紅き悪魔」(P.95~96)より
(丈月城著、集英社スーパーダッシュ文庫刊)
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「王」とはカンピオーネ、神を殺してその権能を簒奪した人間のことです。
 それにしても、なんだか妙に冬木町の「あかいあくま」を彷彿とさせるエリカ。称号もまさに「紅き悪魔」(ディアヴォロ・ロッソ)だしね(^^;

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