【迷場面0116】「触っているのではない、掴んでいるのだ……!」 [終わりのクロニクル]
終わりのクロニクル2〈上〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)
- 作者: 川上 稔
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2003/10
- メディア: 文庫
と、本を取ろうとした手が、暖かく柔らかいものに触れた。
「……ひ」
感触には声も着いてきた。
佐山は何事かと、下を確認。焦点を結んだ視界は、自分を覆う布団を見る。
その筈だった。
しかし何故か今、自分の前には尻が突き出され横たわっていた。
左、降りる梯子の方にはじたばたする素脚が空を掻き、右、壁際には腰までめくれたシャツの背が見える。両者の中央では白い下着の張った尻が、
「や、あ、ちょ……」
慌てた声と揺れる髪、そして目の前でもぞつく丸い双肌(もろはだ)を見て、佐山は眠気混じりに言う。
「何をいきなりフルーティな行為に及んでいるのかね、新庄君」
「そ、そっちがいきなり起き上がるから! 折角起こそうとしたのに」
成程、と佐山はつぶやいた。まだ醒めきっていない頭で、
「私が起き上がったとき、ベッドに乗り上がってきていた新庄の身を巻き込んだのか……」
「な、何を朝っぱらから落ち着いて分析してるんだよ!」
「では慌てて分析しよう。――おお! し、尻だね新庄君っ!」
「おかしくならないでいいから助けてよっ!」
ふむ、と佐山は目の前で上下する尻を見た。おもむろに確かな声で、
「美しい……」
「な、何? 何か微妙に変なこと言った!?」
「当然のことを言ったまでだ。まあ、君こそ落ち着きたまえ、まずは身体を起こそう」
「え? ――って、あ! や、やだ、駄目、お尻触らないで!」
「触っているのではない、掴んでいるのだ……!」
「同じだよっ! 寝ぼけて――、あっ、だ、駄目、下着引っ張らないで! お尻に……!」
「それでは何を掴んでどうやって起こせと」
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新庄・切×佐山・御言
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「終わりのクロニクル②<上>」
(川上稔著、アスキー・メディアワークス電撃文庫刊)
第一章『焔の二人』(P.46~48)より
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男同士です、一応(^^;
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