【迷場面0087】「嘘つき」 [さよならピアノソナタ]
足音がすぐ横で止まった。
「――ぁ」
気づかれた。真冬はふるふると痙攣する指でぼくをさし、「な、な、なんであなたがここにいるのっ?」と、びっくりするほどの大声で叫んだ。ぼくは頭を両腕で抱えて机に突っ伏した。クラス中の視線を感じる。かんべんしてください。
「なに、知り合い?」
千晶がぼくと真冬の顔を見比べながら訊いてくる。ぼくは机に額をこすりつけるようにして首を振った。
「いやいや。知らない。人違いだよきっと」
「なんで嘘つくのっ!」と真冬。
「そっちが忘れろって言ったんだろ」
「ほら憶えてるじゃない! 忘れてって言ったのに」
ああもうわけわかんないよ。
「うん、だから忘れたってば。だれ?」
「嘘つき」
――――――――――――――――――――――――――――――
蛯沢真冬×桧川直巳
――――――――――――――――――――――――――――――
「さよならピアノソナタ」
「3 嘘つき、弁当、パルティータ」(P.45~46)
(杉井光著、メディアワークス電撃文庫刊)
――――――――――――――――――――――――――――――
シリーズの初期も初期、ツン期の頃のまふまふ。……でもこれってデレならぬじゃれみたいなもんなんじゃ?
「――ぁ」
気づかれた。真冬はふるふると痙攣する指でぼくをさし、「な、な、なんであなたがここにいるのっ?」と、びっくりするほどの大声で叫んだ。ぼくは頭を両腕で抱えて机に突っ伏した。クラス中の視線を感じる。かんべんしてください。
「なに、知り合い?」
千晶がぼくと真冬の顔を見比べながら訊いてくる。ぼくは机に額をこすりつけるようにして首を振った。
「いやいや。知らない。人違いだよきっと」
「なんで嘘つくのっ!」と真冬。
「そっちが忘れろって言ったんだろ」
「ほら憶えてるじゃない! 忘れてって言ったのに」
ああもうわけわかんないよ。
「うん、だから忘れたってば。だれ?」
「嘘つき」
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蛯沢真冬×桧川直巳
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「さよならピアノソナタ」
「3 嘘つき、弁当、パルティータ」(P.45~46)
(杉井光著、メディアワークス電撃文庫刊)
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シリーズの初期も初期、ツン期の頃のまふまふ。……でもこれってデレならぬじゃれみたいなもんなんじゃ?
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