【名場面0024】「わっちゃあ……ぬしと二人だけの旅がいい……」 [狼と香辛料]
ホロの視線が後頭部に突き刺さる。
遠目にもロレンスの様子の変化がわかるくらいなのだ。すぐ側にいる賢狼なら心の機微までお見とおしだろう。
「ほほ~う。なるほどの」
そんな言葉により、ロレンスの顔に一気に血が駆け上る。
「ぬしは、んん、こう言ってもらいたいわけじゃな」
ホロをゆっくりと振り向くと、意地の悪い狼は寂しそうな顔をしていた。
それから、口元に軽く握った手を当てて、しおらしく口を開いたのだった。
「わっちゃあ……ぬしと二人だけの旅がいい……」
わざわざ体を軽くひねってしなまで作ってそう言って、ふと顔を背けるとすぐに再び振り向いた。そのわずかな合間に表情が入れ替わっていて、冷たい視線と共に追い討ちを放つ。
「たわけ」
ロレンスはぐうの音も出ず、恥ずかしいやら悔しいやらでまっすぐ立つことすら覚束ない。
ただ、もうとにかくホロの目の前から立ち去りたいという一心できびすを返し、歩き出そうとして呼び止められた。
まだからかい足りないのかとロレンスが振り向くと、ホロは御者台の上で笑っていた。
呆れるような笑顔。
それを見た瞬間、心のうちが落ち着くのを感じた。
「まったく」
ため息交じりのそんな言葉に、ロレンスは自然と苦笑いを返していた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「狼と香辛料Ⅱ」
「第二幕」(P.108~109)
(支倉凍砂著、メディアワークス電撃文庫刊)
――――――――――――――――――――――――――――――
ホロの中で一,二を争う趣味“ロレンス転がし”の様子です(^^;
ちなみにホロは齢ン百年の狼ですが、普段は耳と尻尾のある美少女の姿をしています。
遠目にもロレンスの様子の変化がわかるくらいなのだ。すぐ側にいる賢狼なら心の機微までお見とおしだろう。
「ほほ~う。なるほどの」
そんな言葉により、ロレンスの顔に一気に血が駆け上る。
「ぬしは、んん、こう言ってもらいたいわけじゃな」
ホロをゆっくりと振り向くと、意地の悪い狼は寂しそうな顔をしていた。
それから、口元に軽く握った手を当てて、しおらしく口を開いたのだった。
「わっちゃあ……ぬしと二人だけの旅がいい……」
わざわざ体を軽くひねってしなまで作ってそう言って、ふと顔を背けるとすぐに再び振り向いた。そのわずかな合間に表情が入れ替わっていて、冷たい視線と共に追い討ちを放つ。
「たわけ」
ロレンスはぐうの音も出ず、恥ずかしいやら悔しいやらでまっすぐ立つことすら覚束ない。
ただ、もうとにかくホロの目の前から立ち去りたいという一心できびすを返し、歩き出そうとして呼び止められた。
まだからかい足りないのかとロレンスが振り向くと、ホロは御者台の上で笑っていた。
呆れるような笑顔。
それを見た瞬間、心のうちが落ち着くのを感じた。
「まったく」
ため息交じりのそんな言葉に、ロレンスは自然と苦笑いを返していた。
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「狼と香辛料Ⅱ」
「第二幕」(P.108~109)
(支倉凍砂著、メディアワークス電撃文庫刊)
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ホロの中で一,二を争う趣味“ロレンス転がし”の様子です(^^;
ちなみにホロは齢ン百年の狼ですが、普段は耳と尻尾のある美少女の姿をしています。
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