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【迷場面0068】「そんな誓いに誇りをかけるな!」 [カンピオーネ!]

『ええ。やっぱり、護堂にはわたしのおねだりを聞く義務があると思うの。その辺りのところ、どう思う?』
「どうって、バカ言うなよ。友達同士でおねだりとか言われてもだな……」
『――くせに』
 エリカが小声でつぶやいた。
 それは、人をもてあそぶのが愉しくてたまらない悪魔のささやき声だ。護堂は思わず逃げ出したくなった。
『わたしの純潔を奪ったくせに、酷い人。シチリアでの、あの熱い一夜のことを忘れてしまったの?』
「あ、あれは仕方のないことだったろ。互いの利害が一致した結果、納得ずくで行為に及んだわけでだな……」
『ええ、そうね。わたしは心から望んで、あなたに純潔を捧げたわ。でも、あの後から護堂ったら急に冷たくなって……。釣った魚にエサをやるつもりはないんだ?』
 文句を言い立てながらも、エリカの口調は本当に愉しげだった。
 この悪魔め! 護堂は心の中で毒づいた。
「その誤解を招きそうな表現はやめろ。それじゃあ俺たちは只ならぬ関係になったみたいじゃないか! 人に聞かれたら誤解される」
『只ならぬ関係だもの。あの後だって、わたしたちは何度も唇を合わせ、体を重ねて――』
「だ、だから、そういう変な言い方はやめてくれ!」
『じゃあ、ここで質問。わたしたちのしてきたことを、あなたの可愛い妹さんに教えてあげたら、どうなると思う?』
 護堂は自らの敗北を悟った。
 多分に誇大な表現を含んではいたが、エリカの言葉にウソはない。何かと口うるさい静花には聞かせたくない話だ。かなり面倒な事態になってしまう。
 いま、海を隔てた遙か異国の地で、彼女はまちがいなく微笑んでいるだろう。
 華麗な美少女が、快心の微笑で勝ち誇る――その情景を、護堂はあざやかに思い描くことができた。
「おまえ、あのことや妹を強請りのネタに使う気だったのか……」
『大丈夫。護堂がわたしに誠意を示しつづける限り、妹さんに迷惑をおかけするような事態にはならないわ。我が誇りにかけて誓います』
「そんな誓いに誇りをかけるな! 卑怯な脅迫行為は、誇りに反さないのか!」

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エリカ・ブランデッリ×草薙護堂
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「カンピオーネ! 神はまつろわず」
「序章」(P.19~20)より
(丈月城著、集英社スーパーダッシュ文庫刊)
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 ちなみに、エリカにとって「誇り」とは、何にも勝る最優先事項、とのこと。

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