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【名場面0010】「……違う。大嫌い。巧のこと、大嫌い! 大好き!」 [迷い猫オーバーラン!]

「お……おい、文乃――」
「希が出ていったのは……わ、私のせいだもの……」
「わけ分かんないぞ、文乃」
「そうだもの! 私が出ていってほしいって!」
 そう言って、はっとしたように文乃は口を押さえた。
「そう、希に言ったのか?」
「言わないけど……」
「じゃ、ここにいてほしいって言ったとか?」
「それも言わないけど……」
「じゃあ、それは違うな」
「なんで断言できるのよ!」
「こっちが聞きたい、なんで文乃のせいで希が出てくんだよ?」
 文乃は、沈黙した。
 俺も動けない。不思議な緊張感が走る。
 狼の目に透明な輝きが宿っているのを、見つけてしまったからだ。
「わ……私が、巧のことを……好きだって、気づいたからよっ」
 最後のは叫び声だった。
 つうっと、文乃の頬を一筋の涙が伝った。
 文乃が……俺のことを……好き?
「わ、私は……巧のことが……好き……違う、嫌い」
 表情が読めない。いつもの嘘――じゃない?
 俺の脳も大混乱している。
 どっちだ? 嘘か? それとも……本当なのか?
「……っっっ」
 苦々しい表情で、その場に立ち尽くす文乃。
「……違う。大嫌い。巧のこと、大嫌い! 大好き!」

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都築巧×芹沢文乃
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「迷い猫オーバーラン! 拾ってなんていってないんだからね!!」
「第五章 家族の笑顔の為に」(P.222~223)
(松智洋著、集英社スーパーダッシュ文庫刊)
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 本心とは逆のことばかり言うから「狼少女」、の文乃。
 いつもの狼っぷりと本心丸出しが入り交じってるあたりに、揺れる乙女心が感じられてひじょうにツボです。

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