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【名場面0007】「膝枕の提供を要求する」 [旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。]

「少年」
「んー?」
 呆けたような声で少年が聞き返す。
「膝枕の提供を要求する」
「ええ?」
 異議は聞かずに縁側の板張りの上を尺取虫のように移動し、少年の膝に頭を乗せ、占領した。
 枕代わりにしていた座布団は、お腹の上に置いてこれ以上の腹痛を防ぐ。
「普通こういう時は女の子が膝枕してくれるんじゃないの?」
「いいの、この場合は。私は病人なんだから」
「食いしん坊が食べすぎで腹痛起こしたのが『病気』とはね……ででででででッ!?」
 生意気な口を利く少年にはこう、とばかりに太股をつねってやった。口は災いの元という諺を痛苦を以て理解するがいい。
「全く……硬い膝枕ねぇ……」
「男に無茶言わんでくれ」
 と言いながらも、少年は少女の頭を押さえ、骨が当たらない場所へ誘導してやった。太股に少女の頭が乗っかり、心地よい重さが感じられる。

――――――――――――――――――――――――――――――
少女×少年
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「旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。」
「第一章 夢」(P.58~59)
(萬屋直人著、メディアワークス電撃文庫刊)
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 少年と少女の絶妙な距離感が、こういう舞台設定(詳細は本編を参照されたし)の世界の青春像を体現していてお気に入り。続刊の話は聞かないけれど、期待しないで待ってます。

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