SSブログ

【名台詞0013】神楽坂響子は言いました [さよならピアノソナタ]

「……少年。ベースってなんだと思う?」
 ぼくはそっと顔を上げる。先輩は笑っていなかった。目つきは優しかったけれど。
「バンドがもし一人の人間で。ヴォーカルが頭で、ギターが手」先輩は自分の手元から、千晶の方へと視線を移す。「ドラムスが足だとしたら、ベースは何だと思う?」
 先輩の謎かけに、ぼくは答えられなかった。だって。これまで生きてきた中で、ぼくはずっと受け取るだけの人間だったのだから。
 先輩はようやく薄く笑って、それからすっとぼくに身体を寄せてきた。先輩の手のひらがぼくの胸に押し当てられるので、ぼくはどきりとして固まる。
「ここだよ、少年」
 じっと正面からぼくの目を見つめて、神楽坂先輩は言った。
「心臓だ。わかる? きみがいなければ、私たちは動けない」

――――――――――――――――――――――――――――――
「さよならピアノソナタ」
「11 砂漠、心臓、カシミール」(P.174)
(杉井光著、メディアワークス電撃文庫刊)
――――――――――――――――――――――――――――――
 作中でかなりハイスペックに描かれているせいもあってか、決めセリフの多い神楽坂先輩。長短の名セリフを次々繰り出す物語の演出家に拍手。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。