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【名文0001】はじめに書き出しありき [狼と香辛料]

 この村では、見事に実った麦穂が風に揺れることを狼が走るという。
 風に揺れる様子が、麦畑の中を狼が走っているように見えるからだ。
 また、風が強すぎて麦穂が倒れることを狼に踏まれたといい、不作の時は狼に食われたという。

(中略)

 秋の空は高く、とても澄んでいた。
 今年もまた収穫の時期がくる。
 麦畑を、たくさんの狼が走っていた。

――――――――――――――――――――――――――――――
「狼と香辛料」
「序幕」(P.13~14)より
(支倉凍砂著、メディアワークス電撃文庫刊)
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 だに~的にとてもお気に入りの書き出しの一つ。
 物語世界へすんなりと導入させられる美しい描写と比喩が、ある意味作品の象徴も兼ねていて、略した部分には次章への伏線も仕込んであるという、ひじょうにそそられる逸品です。

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