【書感0026】「ヘヴィーオブジェクト 採用戦争」 [へヴィーオブジェクト]
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「へヴィーオブジェクト 採用戦争」
(鎌池和馬著、アスキー・メディアワークス電撃文庫刊)
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相変わらずのクウェンサー無双。
だが、本作はそれ以上にッッ…………フローレイティアさん無双!!
【迷場面0143】「たった一文の中に人を惹きつけるワードが満載!?」 [へヴィーオブジェクト]
「そういや、高速戦闘中は脳に血が回らなくなるのを防ぐために、足の血流を止めるようにモードチェンジするんだっけ。……もしかして、痺れてる?」
『いようにしゅうちゅうするこうそくせんとうのちょくごは、体にねつがこもるものですし、スーツから足を出して、れいきゃくスプレーをつかうのがてっとりばやいのです。おほほ』
はー、と適当に感心したクウェンサーだったが、そこで彼の体がピタリと止まる。
(あれ……? お姫様の足を冷やすっていう事は、ひょっとして、あの分厚い鋼鉄の壁の向こうでは……特殊スーツを脱い……?)
動きを止めたクウェンサーは、しばし哲学者のように深く深く考え込む。
すると、『正統王国』軍のベイビーマグナムの主砲がこちらを向いて、
『……よけいなことは、考えなくていいから』
「うぎゃああーっ!? ツッコミにしてもそれは強力すぎる!! それから余計なことを言ったのは『情報同盟』軍のエリートのはずだっ!!」
【迷場面0133】『やっほー、お久しぶりー☆』 [へヴィーオブジェクト]
「何だこりゃ!? WL3B1を注文したのに、思いっきりWL3B2のほうが飛んできたぞ!? あのお姫様は俺達を殺す気か!!」
「おい見ろよヒーロー、なんかお姫様のオブジェクトの様子がおかしくねえか!?」
ヘイヴィアに促されて見てみれば、ベイビーマグナムの後部から伸びるアーム状主砲の内の一本が、何やら獲物を追うように小刻みに左右に揺れている。
それは、冷静に観察してみると『やっほー、お久しぶりー☆』という、女の子らしく可愛らしいジェスチャーのようにも見えたかもしれないが、
「ち、ちくしょう! なんか照準こっち向いてねえか!? 砲身を左右に細かく振って微調整までしてやがるぜ!!」
「もはや捨て駒確定だな! だけど死んでたまるかこんちくしょう!!」
【迷場面0132】「ふふ、ふふふ。うふふふふふ」 [へヴィーオブジェクト]
少女は、携帯電話の小さな画面を眺めていた。
そこに表示されていたのは、短いメールだった。
アラスカの基地で出会い、窮地に陥った自分を助けに来てくれた、本物の友達。
「ふふ」
内容はそっけないものだったが、お姫様にとっては関係なかった。内容ではなく、誰からのものであるのかがこんなに重要な意味を持つとは、今まで想像もできなかった。
「ふふ、ふふふ。うふふふふふ」
思わず鼻歌を歌い、椅子に座ったままダンスっぽく体を小さく左右に振った直後、適当に振り回した手の甲がうっかりレバーにぶつかった。
巨大な主砲がガコーンと大きく動き、空中の連絡通路を押し潰しそうになり、すんでの所で整備兵の婆さんをホームランしそうになったお姫様は、慌ててレバーを掴み直す。