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【迷場面0155】「でも、かわいくなった隊長はもっと好きです!」 [IS<インフィニット・ストラトス>]


IS〈インフィニット・ストラトス〉 3 (MF文庫J ゆ 1-3)

IS〈インフィニット・ストラトス〉 3 (MF文庫J ゆ 1-3)

  • 作者: 弓弦 イズル
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2009/12/22
  • メディア: 文庫


「何をしている! 現時点で三七秒の遅れだ! 急げ!」
 そう怒号を飛ばしているのは副隊長であるクラリッサ・ハルフォーフであった。年齢は二十二。部隊の中では最高齢であり、十代が多い隊員たちを厳しくも面倒見よく牽引する『頼れるお姉様』。
 その専用機『シュバルツェア・ツヴァイク(黒い枝)』に緊急暗号通信と同義のプライベート・チャネルが届いた。
「――受諾。クラリッサ・ハルフォーフ大尉です」
『わ、私だ……』
 本来ならば名前と階級を言わなければならないのだが、向こうの声が妙に落ち着き無く揺れているためクラリッサは怪訝そうな顔をする。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長、なにか問題が起きたのですか?」
『あ、ああ……。とても、重大な問題が発生している……』
 その様子からただごとではないと思ったクラリッサは、訓練中の隊員へとハンドサインで『訓練中止・緊急招集』を伝える。
「――部隊を向かわせますか?」
『い、いや、部隊は必要ない。軍事的な問題では、ない……』
「では?」
『クラリッサ。その、だな。わ、わ、私は、可愛い……らしい、ぞ』
 ………………。
「はい?」
 それまでの規律整然としたクラリッサの声が、半オクターブほど高くなる。ついでに、きりりっとした口調は突然の意味不明な事態に対して若干間の抜けたものへと変わっていた。
『い、い、一夏が、そう、言っていて、だな……』
 と、そこまで聞いてクラリッサはピンときた。
「ああ、織斑教官の弟で、隊長が好意を寄せているという彼ですか」
『う、うむ……。ど、どうしたらいい、クラリッサ? こういう場合は、どうするべきなのだ?』
「そうですね……。まずは状況把握を。直接言われたのですか?」
『い、いや、向こうはここに私がいるとは思っていないだろう』
「――最高ですね」
『そ、そうなのか?』
「はい。本人のいない場所でされる褒め言葉にウソはありません」
『そ、そうか……!』
 さっきまで動揺十割だったラウラの声が、クラリッサの言葉でぱぁっと花開くように明るいものへと変わる。
 ちなみに、現在集めた隊員たちには、クラリッサがプライベート・チャネルをしながら筆談で状況を伝えている。
【隊長の片思いの相手に脈アリ】
「おおおお~!」と十数名の乙女が盛り上がった声を漏らす。
 ――ちなみに、この部隊でラウラは人間関係に多大な問題を抱えていたのだが、先月のVT事件の直後に『好きな男ができた』という相談をクラリッサに持ちかけたときから全てのわだかまりが解けて消えた。
 そのときの様子を断片的に伝えると――
「えええっ! あ、あの隊長に好きな……男!?」
「私は織斑教官を本気で好きなのだとばかり……!」
「そうだろう、そうだろう。私もそう思っていた。しかし、だな、あの隊長が、あの、隊長がだぞ? 『お、男の気を引くにはどうしたらいい……?』と言ったんだ!」
「「「きゃああ~っ!」」」
「だから私は真摯に教えた! 日本では気に入った相手を『自分の嫁にする』という風習があるということを!」
「さすが副隊長! 日本に詳しい!」
「当然だ。私は伊達や酔狂で日本の少女漫画を愛読しているわけではない!」
「か、かっこいい……!」
「そんなかっこいい副隊長が好きです!」
「でも、かわいくなった隊長はもっと好きです!」
「そうだろう! 私もそうだ! ああっ、どうして本国にいる間にこうして心を通わせあえなかったのだろうか!」
「たしか、こういうときに日本では赤いお米を炊くんですよね?」
「そうらしい。おそらく、血よりなお濃いものがあるという教訓なのだろうな」
「さすがは日本、痺れます!」
「憧れます!」
「よし、部隊員諸君、現時刻をもって今日の訓練は終了する! 今すぐ兵舎食堂に向かい赤い米を炊くぞ!」
「「「はい、副隊長(おねえさま)!」」」
 ――こんな感じである。さすがは十代女子(一部二十代女子)、いがみ合うのもささいなことなら仲直りもまたささいなことで起こるのであった。
『そ、それで、だな、今、その、水着売り場なのだが……』
「ほう、水着! そういえば来週は臨海学校でしたね。隊長はどのような水着を?」
『う、うん? 学園指定の水着だが――』
「何を馬鹿なことを!」
『!?』
「たしか、IS学園は旧型スクール水着でしたね。それも悪くはない。悪くはないでしょう。男子が少なからず持つというマニア心をくすぐるでしょう。だがしかし、それでは――」
『そ、それでは……?』
 ごくりとラウラがつばを飲む。
「色物の域を出ない!」
『なっ……!?』
「隊長は確かに豊満なボディで男を籠絡するというタイプではありません。ですが、そこで際物に逃げるようでは『気になるアイツ』から前には進まないのです!」
『な、ならば……どうする?』
「フッ。私に秘策があります」
 言葉にも熱が入り出すクラリッサ。そして、その目がキュピーンと光った。


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クラリッサ・ハルフォーフ×ラウラ・ボーデヴィッヒ
 ×『シュバルツェ・ハーゼ(黒ウサギ隊)』隊員
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「IS<インフィニット・ストラトス>③」
(弓弦イズル著、MF文庫J刊)
第一話「レイン・メーカー」(P.77~82)より
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 アニメでの人気爆発で「シャルロッ党」の勢力伸長が著しいようですが、原作時代から「ブラックラビッ党」のだに~としてはラウラ全力押しで!!!
 しっかし……「IS」といい「終わクロ」といい、大丈夫か、ドイツ(^^;


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