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【名場面0051】「絶対、ぜったい許さないんだからぁ!」 [パパのいうことを聞きなさい!]


パパのいうことを聞きなさい 2 (集英社スーパーダッシュ文庫)

パパのいうことを聞きなさい 2 (集英社スーパーダッシュ文庫)

  • 作者: 松 智洋
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/02/22
  • メディア: 文庫


「その話はいいから。それより、ベッドに戻らないと具合が悪くなるよ、空ちゃん」
「戻れないわよ……。だって、今、お兄ちゃんのこと、あんな風に言われてた……っ!」
 しっかりと、前島君の目を見て告げる。それに前島君は戸惑っているように見えた。
 こんな空ちゃんを見たことがないんだろう。
 内弁慶で、引っ込み思案な空ちゃん。でも彼女は、俺の知る限り、しっかり者で意志の強い、三姉妹の頼りになるお姉ちゃんなのだ。
「で、でも……こいつは、赤の他人だって」
「……そんなことないっっっ!!」
 空ちゃんが残っていた階段を駆け下りてくる。そして、俺の側に駆け寄った。
「お兄ちゃんは、私達がバラバラに引き取られそうになってたときに、一人だけ私達を一緒にいられるように、自分のところにおいでって言ってくれたのっ。どうしたらいいか、わからなかったときに、親戚の中でお兄ちゃん一人だけが、そう言ってくれたのっ」
 学校の友達の前でだと、あんなにおとなしかったはずの空ちゃんは、前島をきつく睨みつけている。その目は真っ赤で、涙がにじんでる。
「一人暮らしの狭い部屋に、私達姉妹三人を置いてくれて……っ、それで一緒に暮らしてくれた。この家に私達が住めなくなったから、自分のところに呼んでくれたのっ! それで私達のことを家族だって言ってくれたっ! そのせいで、お兄ちゃんも伯母さんから責められたりして、大変だったのに……でも、それでも、私達を放り出さなかったのっ!」
 いつもは可愛らしい形の唇が、今は悔しさで噛みしめられている。
 上気した頬と、潤んだ大きな瞳。怒った空ちゃんは神秘的なほど綺麗に見えた。
「お兄ちゃんがいてくれたから……だから、だから私達は、またこの家に戻ってこられて、こうして四人で一緒に暮らせてる。確かに、私や美羽は、お兄ちゃんと全然血は繋がってないけど、でも……お兄ちゃんは他人なんかじゃないっ。私達のために、辛くてもバイトしてくれてるのも知ってるっ、頑張ってくれてるのも知ってるっ、今日だって私のために学祭を休んで看病してくれてるっ。それでどうして、お兄ちゃんを家族じゃないだなんて言われなきゃいけないのっ。お兄ちゃんは、私の大事な家族なんだからねっ! だから……だから……あんなひどいことまた言ったら許さないっっ!!」
「た、小鳥遊……」
 初めて見る空ちゃんの激情を前に、前島君は半歩後ずさる。
「前島君……絶対、ぜったい許さないんだからぁ!」


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瀬川祐太×小鳥遊空×前島大機
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「パパのいうことを聞きなさい!2」
(松智洋著、集英社スーパーダッシュ文庫刊)
「第六章 たった一つのこと」(P.259~262)より
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 2巻の空ちゃんは可愛すぎです。いつもはぷんすかしてるけど、本当は……って、ベタですが、それがいい!

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コメント 1

ホセ・ロペス

俺、この巻買って読んだけど凄くいい話だったな。。。。。。。。。。。
by ホセ・ロペス (2013-04-16 14:59) 

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