【迷場面0091】「あぅあー!?」 [葉桜が来た夏]
瞑目して鼻から息を抜く。彼は拳を握りしめると、上から振り下ろすように星祭の頭を小突いた。
「あぅあー!?」
奇妙な悲鳴を上げて星祭が飛び退った。両手で頭を押さえ、潤んだ瞳をいっぱいに見開く。
「な、な、な、なにするんだ!?」
「馬鹿なことで悩んでんなよ」
不機嫌極まりない声で学は言った。眉間に皺を刻んだまま、ちらりと背後の葉桜を一瞥する。
「あのときのことがまた気になってたら、あんな面倒くさい奴と共棲なんてしてるかよ。俺がおまえにむかついてるとしたらな、それはもっと別のことだ」
「べ、別……?」
学はこくりとうなずいた。
「孤立無援で逃げこんできた身内を、たとえそれがアポストリだからって見捨てるわけないだろ。それを余計な気回して話をややこしくしやがって。俺をなんだと思ってるんだ。見損なうな」
「………」
「というわけでこっちこい、もう一回殴らせろ」
言いながら拳を振り上げると、星祭は悲鳴を上げ警務官の背中に逃げ込んだ。そのまま顔を半分だけ出してぶるぶる震えている。その様子はあたかも檻を揺らされて怯えるハムスターのようで、学は吹き出しそうになった。
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星祭×南方学
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「葉桜が来た夏2 星祭のロンド」
(夏海公司著、アスキー・メディアワークス電撃文庫刊)
「第三話」(P.327~328)より
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星祭奇声コレクション・その2。
……いや、なんか妙にツボったものですから(^^;
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